DeFi (Decentralized Finance)ユーザーを惑わす魔法の言葉「インパーマネントロス (Impermanent Loss)」。
僕の知り合いでも「インパーマネントロスがあるからDeFiでイールドファーミングはしたくない」とまで言わしめる理由はなんなのか。
今回はインパーマネントロスの
- 仕組み
- 破壊力
- 対抗策
- 報酬との兼ね合い
- 解釈のしかた
という点についてみていきます ^^
ちなみに僕の考えでは「インパーマネントロス=ドルコスト平均法と機会損失」です。なぜその考えに辿り着いたのか記事で解説していきます ^^/
今回の記事を書くにあたり以下の記事を参考にしました ^^
- Lesson 5 - The Truth About Impermanent Loss and Common Misunderstandings | Alpaca Finance
- Rebalancing vs Passive strategies for Uniswap V3 liquidity pools | DeFi Scientist
- Impermanent Loss | How To Calculate And Mitigate DeFi’s Biggest Risk | James Bachini.com
それでは始めていきます ^^/
インパーマネントロスとは
インパーマネントロスはファーミングしている間に起こる「機会損失」のようなものです。
ファーミングは2つのトークンをペアにしてLPトークンにしてDEXに供給して行いますが、内部では
- トークンの価格が変化する
- 2つのトークンの比率を常に1:1にする
ということがおこります。感覚的には以下の図のような感じでリバランスされます。
その結果トークン数が少し減ってしまい、LPにせずにトークンをそのまま持っていたほうが得だった、ということが起こります。
これがインパーマネントロスです。
もう少し仕組みを詳しくみていきましょう ^^
インパーマネントロスの仕組み
仕組みを理解するために2つのパターンをシミュレーションしてみます ^^
- ETH-USDCでETHの価格が2倍になったケース
- ETH-USDCでETHの価格が半分になったケース
先に計算過程と結果を見せると以下のようになります。
1と2の両方において、もしLPをつくっていなかった場合と比べて5.72%のインパーマネントロスが発生しています。
このロスはトークンの数量が
- ETHの数 = SQRT ( (Price Constant / Price Ratio) )
- USDCの数 = SQRT ( (Price Constant * Price Ratio) )
の計算式で再計算(リバランス)されることで発生します。
ETHのまま持っていたほうが価値が高いことから、インパーマネントロスはトークン価格が上昇したときの「機会損失」といえるでしょう。
それだけでなくトークン価格が下がったときにも発生する「泣きっ面に蜂損失」とも言える(?)かもしれません ^^;
インパーマネントロスの破壊力
そしてインパーマネントロスの大きさはトークン価格の変化の大きさによって変わります。
価格変化に対するインパーマネントロスの大きさをチャートにすると以下のようになります。
注釈
- Volatile Asset + StablecoinのLPを想定(例:ETH-USDC)
- Stablecoinの価格変動は考慮しない
- 100% = ファーミング開始時
- 0% = 価格が0になった場合
- 500% = 価格が5倍になった場合
- Googleスプレッドシートで作成
これはステーブルコインとのペアの場合での計算ですが、トークンの組み合わせによってインパーマネントロスは増減します。
このチャートを見るとインパーマネントロスはかなり大きく見えますが、相当ヤバいトークンでも買わない限りは頻繁に価格が1/4以下になったり3倍以上になったりはしないでしょう ^^;
なのでもっと現実的な±50%の範囲でみてみると
こうなります。こうすると大分マシな気もしてきます ^^;
どう感じるかはその人次第なので、とりあえずどうすればインパーマネントロスの影響を抑えて投資運用ができるか考えてみましょう ^^/
インパーマネントロスの対抗策
基本的な考え方としては
LPの組み合わせ | 影響 | 例 |
---|---|---|
価格変動のパターンが同じトークン同士のLP | トークン比率が常にほぼ同じ(インパーマネントロス:小) | ETH-WETH |
ステーブルコインとのLP | トークン比率が中和される(インパーマネントロス:中) | SOL-USDC |
価格変動のパターンが逆のトークン同士のLP | トークン比率が大きく変わる(インパーマネントロス:大) | YFI-WOOFY (?) |
ようは同じような値動きをするトークンをペアにするとインパーマネントロスが少なくなり、逆の場合には大きくなるというわけです ^^
なので考えられる対抗策としては
- 価格がペグされたトークンをペアにする
- ステーブルコイン&ステーブルコイン(例:USDC-DAI)
- トークン&Wrappedトークン(例:AVAX-WAVAX)
- トークン&Bondedトークン(例:LUNA-bLUNA)
- 値動きが安定かつ似ているトークンをペアにする(例:WBTC-ETH)
- 素直に単体ステーキングする
基本的にインパーマネントロスのリスクが低いLPは報酬も低いです ^^; なので報酬とのバランスも考えて自分の目指している運用結果に適した方法でおこなうのが良いかと思います ^^
Financial Adviceではないのでご注意を ^^;
インパーマネントロスとファーミング報酬
ファーマーとしてはインパーマネントロスを最小限にしつつ報酬を最大化したいところです ^^
どういった状況で運用成績が高くなるのかというと
- DEXで大量&高価な取引が行われる(TVLの向上)
- 買いと売りが同じくらいでトークン価格が維持される(インパーマネントロスの最小化)
- これにより大量の取引手数料が回収されてファーマーに報酬として支払われる(報酬の最大化)
こういった状態でしょう。
なので
- TVL
- トークンの価格変動
- ペアにするトークンの種類
- LPの手数料
- 自分のLPのシェア%
などを総合的に判断して決めることが重要になってきます。
インパーマネントロスの解釈
ここまでインパーマネントロスについて聞くとただの損失以外のなにものでもありません T_T
ですが僕は解釈のしかたによっては案外悪いものではないと思っています。
とくにトークンをステーブルコインとペアにしたときに思うのが「LP内部でドルコスト平均法の自動トレードをしている」という解釈です。
例えばETH-USDCのLPでは
- ETH価格が上がるとETHを売却してUSDCを買う
- ETH価格が下がるとUSDCを売却してETH買い増しする
ということが行われており、まさにドルコスト平均法のような運用がされています ^^(Alpaca Financeのドキュメントにもまさにこんなことが書かれていました)
もちろん単純に売買をしているのではなくインパーマネントロスが手数料の如く払われているわけです・・・
が、「もしETHをそのままもっていればもっと資産が増えていた」と思うのはどうかと思います。なぜなら
- ETHの価格の急上昇に気づけたか?
- 勇気を出して売り注文(スワップ)を出せたか?
- もっと上がるかも・・・と思ってるうちに価格が下がって結局チャンスを逃したかも?
ファーミングだと利益確定できてるけど仮にトークンをそのまま持っていたとして高値で売ることができただろうか?と。
もちろん個人の考え方なので納得できないかもですが、僕はトレーダーになろうとしているわけではないし、こんなことに悩んだり時間を使いたくないのでファーミングしてます ^^;
とくにDeFiで生活費を稼ごうなんてことをしている人は利益を最大化させることよりも、少なくなっても安定して利益を出し続けることが重要かと思います。
なのでインパーマネントロスがあってもファーミングしたっていいじゃないか、と思うわけです ^^;
なので収入を生み続けるための運用(インカムゲイン)としてファーミングを活用しています
- DeFiイールドファーミングの仕組みを理解して資産を高利回り運用する
- Beefyでの最適化イールドファーミング運用
- Mirror Protocolでのデルタニュートラル戦略
- Mars Protocolでのレバレッジイールドファーミング運用
そしてそれとは別にDeFiを使っての総資産を増やすための運用(キャピタルゲイン)もしています
自分なりに考えた上でファーミングとインパーマネントロスとの付き合い方を決めるのが良いのかと思います ^^
まとめ
今回はDeFiで恐れられるインパーマネントロスについて解説しました ^^
- インパーマネントロスはLPトークンのリバランスによって発生する損失
- 損失の大きさは「価格変動の大きさ」や「ペアにしたトークンの価格変動パターン」によって変わる
- ETH-USDCのようなペアの場合、ETHの価格変動に対するインパーマネントロスは
- 半減 -> 5.72%
- 2倍 -> 5.72%
- 3倍 -> 13.40%
- 4倍 -> 20.00%
- インパーマネントロスを下げるには以下の方法が有効(報酬は下がってしまう)
- 価格がペグされたトークンをペアにする
- 値動きが安定かつ似ているトークンをペアにする
- 単体ステーキングする
インパーマネントロスは損失なので減らせるに越したことはありません。
ですが記事内でも書いたように、LPのリバランスはトークンをドルコスト平均法のように売買をしてくれているとも捉えることができます。
たとえインパーマネントロスが発生しても大部分の利益を確定してくれる(ステーブルコインとのペアの場合)のであれば、売却のチャンスを逃すよりもいいとも考えられます ^^; それにファーミング報酬でちゃんとロスをまかなえることもあります。
僕の場合には生活費をDeFiの収入で支払っているので、「最高のタイミングで売却して総資産を増やす」よりも「総資産を減らさずに長期的に収益を上げ続ける」ことが重要だと考えています。
そういった運用をしている人にとってはインパーマネントロスを「許容できる機会損失」や「ドルコスト平均法の手数料」として見ることができるかもしれません ^^
記事をシェア・Likeしてくれると ^_^ です!
comments powered by Disqus